架空の庭 〜花の物語〜
「花」の出てくる小説や詩などを写真とともにご紹介しています。今咲いている花が中心です。
霜島ケイ 『カラクリ荘の異人たち 3』

太一がおかしな下宿屋、空栗荘で一人暮らしをするようになって数ヶ月。
人間の住む「こちら側」の世界と、妖怪たちの住む「あちら側」の世界の境界に建つこの建物で、不思議な出来事が起こるのは、いつものことだ。
今日も二階の廊下に落ち武者が立ち、市松人形が動き回る。

冬を迎えたある日、太一に実家から宅配便が届く。送り主は父の再婚相手である阿川鈴子。中に入っていた手作りのクッキーは、固すぎのうえに甘すぎて、明らかに失敗作だった。ところが、料理の得意な空栗荘の住人からそのクッキーを「悪くない」と言われ、太一は混乱してしまう。
また、冬休み実家に帰らないと言った太一に、年の近いレンが帰ったほうがいいと言ったことで、喧嘩をしてしまい……。

そこにはまるで、季節がないみたいだった。
足下にはレンゲにタンポポ、冬枯れたはずの草むらに新しい緑が萌えて、家の周辺には赤紫のホタルブクロや黄色の菜の花が揺れている。
さらに視線を移せば、日だまりには深紅とピンクの秋桜。野菊。オシロイバナ。
樹木も見事だ。桜がぽつぽつと薄紅の花を灯し、その傍らには山吹の黄金とユキヤナギの白。傾いた軒から、小ぶりとはいえ藤が紫の房を幾つも垂らしていた。
(p.189)

+ + +

帰り花の咲き誇る場所に私も行ってみたいです。
雪女のように冬に住む生き物ならなおさら見てみたいと思ったでしょうね。

カラクリ荘の異人たち 3 ~帰り花と忘れ音の時~ (GA文庫)(Amazonへ)

テーマ:本の紹介 - ジャンル:小説・文学

魏野 「白菊」
kiku13

濃露繁霜著似無
幾多光彩照庭除
何須更待蛍兼雪
便好叢辺夜読書

濃露繁霜 著けども無きに似
幾多の光彩 庭除を照らす
何ぞ須いん 更に蛍と雪を待つを
便ち好し 叢辺 夜 書を読まん

+ + +

「蛍の光、窓の雪」ではなく、白菊の輝きで読書するのがいいという詩です。
11月になると、時々冷え込みますね。

テーマ:本の紹介 - ジャンル:小説・文学

『枕草子』 第八段
kiku16

正月一日、三月三日は、いとうららかなる。五月五日は曇りくらしたる。七月七日は曇りくらして、夕がたは晴れたる空に、月いと明かく、星の数も見えたる。九月九日は、曉がたより雨すこし降りて、菊の露もこちたく、おほひたる綿などもいたく濡れ、うつしの香ももてはやされたて、つとめてはやみにたれど、なほ曇りて、ややもせば降り立ちぬべく見えたるもをかし。

+ + +

今日は旧暦の九月九日。
重陽の節供(九月九日)の前日に、菊に綿をかぶせて、九日に露に濡れた綿で身を拭うと、老いを忘れるという風習があったようです。

テーマ:本の紹介 - ジャンル:小説・文学

「バラの花とバイオリンひき」
rose36

なかなか子どもが生まれないで哀しんでいたおきさきを、空の小鳥たちが、ひとりのおばあさんのところへ連れて行ってくれた。そのおばあさんはいろいろな魔法を知っていて、おきさきに王女を授かる方法を教えてくれる。
ところが、おばあさんは、王女が勉強を始められる年頃になったら、私にあずけてくださいとお願いするのだが、おきさきはあっさりと断ってしまい、おばあさんにうらまれてしまう。

おきさきはおばあさんが助言したとおりにしたのだが、生まれたのは王女でなく、まっかなバラで……。

さて、おきさきはお城にかえると、おばあさんのさしずどおりにしました。ところが、生まれたのは、王女ではなくて、美しいまっかなバラの花でした。バラの花はチョウチョウのように、ひらひらと、あけはなったまどからとびだすと、バラの枝にくっつきました。(p.75)

+ + +

ジプシーのむかしばなしを集めた『太陽の木の枝』という本からご紹介しています。
ちょうのようにひらひらと飛んでいくとうことは、オールドローズのようなバラなのでしょうか。写真のバラが飛んだとしたら、少々不気味です(笑)。

太陽の木の枝―ジプシーのむかしばなし (福音館文庫)(Amazonへ)

テーマ:本の紹介 - ジャンル:小説・文学

ガーナー 『ゴムラスの月』

『ブリジンガメンの魔法の宝石』の続編。
オールダリーのモソック夫妻の家にあずけられているコリンとスーザンは、魔法使いのキャデリンと共に魔女のモリガンの力を粉砕したはすだったが、モリガンが生き延びていたことを知る。

彼らは再び魔法の世界に巻き込まれてしまい……。

その木は気まぐれな木なのです--古い、まっすぐな小道が通っ ている丘の上でしか育たないし、花は満月の晩以外は咲かないのです。(p.82)

+ + +

気まぐれな木がとても印象的でした。

テーマ:本の紹介 - ジャンル:小説・文学